序章<突然のお願い>
「あなたは・・・・ちこりの・・・・おにいちゃんなの」
衝撃的な出会いから僅か4日後。
一樹とちこりは結婚しめでたく夫婦となる。
そして、毎日仲睦まじく過ごしてきた数ヶ月…。
新しい年を迎えたばかりの頃のお話。
「あ…あの、おにいちゃん…」
食事を終え、後片付けを終えたちこりは躊躇いがちに一樹に声を掛けた。
「ん、どうかした?」
またいつものお願い事なのだろうとちこりの方も向かずに一樹は応えた。
それには確固とした理由があった。
ちこりは普段は”一樹君”と呼ぶ。
恋人になり、ましてや今や伴侶であるちこりに一樹が約束したのである。
しかし、ちこりは”お願い事”があるときは決まって”おにいちゃん”と呼んでいた。
「えっと…その…」
ちこりはうまく切り出せないでいた。
「何か欲しいものでもあるの?」
「ううん、違うの!そう言うことじゃ…ないの…」
「じゃあ何かな?」
「あのね…少しの間、おにいちゃんとは…会えないの…」
「え!?」
ちこりの言う事に耳を疑い初めて向き直った。
ちこりはぺたんと座りながら俯いていた。
微かに震えている。
そんなちこりの髪の分け目を見ながら一樹はもう一度聞きなおした。
「なんて言ったの?」
「だ…だから。おにいちゃんとは…少しの間、会えないの。解って欲しいの」
顔を上げたちこりは大きな瞳に涙を浮かべていた。
「解って欲しいって…、説明してくれなきゃ納得なんて出来ないだろ?」
思わずあげた一樹の声にちこりはビクッと震えた。
その瞬間、瞳に溜まっていた涙が床にぽたりと落ちた涙の粒とは違い大きなしみを作った。
「ご、めんな…さい…。ごめん…なさい」
そう繰り返しながらちこりは再び俯いてしまった。
その姿を見た一樹は何故だか悲しい気持ちになった。
明らかに正論を言っている自信はあった。
しかし、ちこりを泣かせてしまったと言う事実が一樹を襲った。
原因は何だか見当もつかない。
何がちこりをそこまで追い込んでしまったのか…。
何も思いつかない事に一樹自信も泣きたくなった。
「解った、解ったよ…」
何一つ解ってなんかないけど一樹はそう言った。
「うっ、ひっく。ごめ…なさい。えうっ…」
「泣かないでいいよ。いつまで待ってればいいの?」
「うくっ…解らないの…」
「戻って来るんでしょ?」
「わか…な…の…」
「そっか。…………そっか」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
少しの間、ちこりの泣く声以外は何も聞こえなかった。
しばらくしてちこりは赤くなった瞳を一樹に向けた。
「おにいちゃん…」
「いいよ。待ってるから。チーコ帰ってくるまで待ってるよ」
半ば諦めたように一樹は言った。
「……」
ちこりは一樹の優しさに何も言えなかった。
理不尽な事を切り出した事は重々承知していたが、理由も聞かずに我が侭を許してくれた一樹の優しさに再び泣き出しそうになった。
涙の溜まった瞳を拭ってちこりはとぼとぼと玄関まで歩いていった。
「ばいばい…」
それだけ言うとちこりは玄関を開けて駆けて行った。
とてもその言葉を口にした後に一樹の姿を見られる勇気は無かった。
残された一樹はただちこりが駆けていった玄関を見つめていた。
*****つづく*****
後書き
起承転結って良く解ってないんですけど(ぉぃ)。
そんな感じ上手く分かれてる様に書ければいいなと。
今回は一樹とちこりのラブハネ以降のお話。
さてこれからどんな風になるんでしょうか?w
※一応主役キャラは全部出す気でいます。
そして、キャラの設定も許婚騒動以降少し皆が仲良くなってる感じと言う感じで…。
□■SS寄りへ■□